お茶のこと

濃茶と薄茶の違いとは?/点て方の違いもお教え致します

さて、濃茶と薄茶の違いについてお話し致しましょう。

濃茶も薄茶も「茶事」(ちゃじ)の一部分となります。

「茶事」とは、茶道で正式な茶会のことです。その「茶事」とは、懐石料理付きのフルコースの茶会となります。

薄茶も濃茶もどちらも、正式な「茶事」の一部を切り取った茶会、またはお稽古なのです。

茶道のお稽古やお茶会では、この茶事の一部である濃茶と薄茶の作法だけを練習しているのです。

実際は、薄茶の場面だけで、お茶会を楽しんだりということも多いです。

そして、濃茶と薄茶の違いをまとめると以下の様になります。

1.使う茶葉が違う

2.お点前が違う

3.使う茶碗も違う

4.飲み方の作法が違う

以上のことを順番に説明していきます。

濃茶と薄茶で使うお抹茶について教えます

「濃茶」(こいちゃ)は、その名のとおり「濃厚な抹茶」です。

一方「薄茶」(うすちゃ)は、「さらりとした薄い抹茶」となります。

濃茶は、濃茶用の茶葉を使って作ります。そして、茶葉の量が多く、ドロリとした濃厚で芳醇な味わいが特長の抹茶です。

薄茶は、濃茶にくらべて薄く、少し渋みがあるのが特長で、裏千家であれば表面に泡を立てクリーミーに仕上げます。

一般的に、抹茶といえば「薄茶」のことを言います。そして、薄茶のことを「おうす」と呼びます。

濃茶は濃茶用の茶葉を使う。薄茶は濃茶用と薄茶用どちらでもよい。

濃茶と薄茶の「茶葉の違い」をご説明します。

濃茶で使う茶葉は、品質の高い濃茶用のものを選びましょう。

濃茶は、とても濃いお茶です。そのため質の低い茶葉だと、味が渋くなって飲みにくいです。苦味の少ない良い品質のものを選びましょう。

また、濃茶用の茶葉は品質が良い分、値段がかなり高くなります。

例えば、小山園であれば代表的なのは慶知の昔。

「慶知の昔」は先代のお家元、鵬雲斎のお好み。

値段が張りますが、茶人に広く愛されるまろやかな味のお抹茶です。私も大好きで、自分の茶事の時にはこれを使いました。

濃茶用の茶葉では、商品名に「昔」(むかし)とついていることが多いです。

茶葉の製法そのものは、濃茶も薄茶も同じです。

また、薄茶の茶葉の商品名には、「〇〇の白」と白の文字がつくことが多い様です。

「清浄の白」は当代お家元の坐忘斎、「珠の白」は鵬雲斎のお好みとなります。

お茶会ではお家元のお好みのお抹茶が用いられるのが殆どです。

薄茶には「濃茶用の茶葉」を使ってもよいです。濃茶の茶葉は品質が高く雑味がないからです。

反対に、「薄茶用の茶葉」を濃茶で用いても渋くて美味しく感じません。

濃茶は、濃茶用の高級な茶葉を使いましょう。薄茶は、薄茶用または、濃茶用の茶葉でもかまいません。

容量は用途に応じて求めよう/お棗に入れる場合

抹茶の茶葉は、20グラムや40グラムという量で販売されていることが多くなっています。

これは、茶葉40グラムで、「棗」(なつめ)が満タンになるからです。棗(なつめ)とは、茶道で用いる抹茶の粉末の入れものです。

棗にいっぱいに購入したいときは、40グラムをお選びください。お試しされたい場合は20グラムでOKです。

濃茶と薄茶ではお点前のやり方が違う/実演してみます

濃茶と薄茶ではお点前が全く異なります。

点前座でお茶を入れてからの実演をやってみましたのでご覧ください。

まずは濃茶から。

続いて薄茶。

以上です。いかがでしょうか。

薄茶は攪拌するように点て、濃茶はゆっくりと練るように点てます。

一般的な大人数でのお茶会というと手軽な薄茶を提供される場合が多いです。

初めての方は苦手とおっしゃる方もいらっしゃいますが、お濃茶はその風味を感じてとっても美味しいのです。

美味しいお菓子がある時は自分で濃茶を点ててみるのも良いのではないでしょうか。

濃茶と薄茶で使うお茶碗は違うの?/濃茶は格の高い抹茶碗、薄茶では、お好みの茶碗を使う

濃茶と薄茶で使われる抹茶碗の違いについてご説明します。

まず、「濃茶」では、「格」の高い抹茶碗を用いるという決まりごとがあります。濃茶は、いわば茶事のメインイベントだからです。

そのため、濃茶を飲むときは、以下のような格の高い茶碗から選ぶこととなります。

茶碗の格の順番
1.楽焼(らくやき)

2.萩焼(はぎやき)

3.唐津焼(からつやき)

4.井戸茶碗(いどちゃわん)

「一楽・二萩・三唐津」(いちらく・にはぎ・さんからつ」と言って、この3種のお茶碗は古くから茶人に愛されています。

井戸茶碗も濃茶席で黒楽の次に出てくると席が締まりますよ。

濃茶では、この中から選ぶのが良いでしょう。

次の写真は、楽焼・萩焼・唐津焼・井戸茶碗の一例です。


黒楽です。


これは、萩焼。


唐津ですね。


井戸です。かなり大振りのお茶碗になります。

一方、薄茶では、格の上・下に関係なく茶碗を選んでもよいのです。薄茶は、カジュアルな茶会ということだからです。

季節の絵柄の付いたもので楽しむのも良いですし、お濃茶で用いるような種類のものを使っても構いません。


秋草の絵が描いてあります。

季節の絵が描かれているお茶碗があると薄茶席はぐっと華やぎます。

濃茶と薄茶の頂き方教えます/裏千家の場合

お濃茶は実際どの様に頂くのでしょうか。複数人で頂く場合の作法についてお話し致します。

お濃茶の頂き方

①正客の前へ、お茶碗が出されます。正客が自分で点前座まで取りに行く場合もあります。

②正客:茶碗を次客との間において、みなさんに一礼

→次客以下:正客の一礼をうけて総礼(全員でお辞儀)する

③正客:茶碗を膝前に置く

→軽くおしいただく

→茶碗を小さく2回回して

→お茶を一口いただく

④亭主より「いかがですか?」とお服加減を尋ねられる

→正客:「大変けっこうでございます」「まろやかでとても美味しいです」など返答

⑤正客:お茶を二口ほどいただく

(いただく分量の目安は、お茶を回し飲む人数で等分になるように)

⑥正客:お茶をいただいた後、茶碗を膝前におく

→飲み口を紙小茶巾などで拭う

→茶碗を小さく2回・向こうに回し、茶碗の正面を戻す

⑦次客:さらに次の客へ「お先に」と礼をする

⑧正客:茶碗を右手であつかって(一度、左手のひらにのせて)

→へり内・次客との間に置く

→次客に送り礼 同時に次客はこれを受けお茶碗を手に取り感謝する

⑨次客は正客と同様にお茶をいただく

⑩正客亭主にお茶名・お詰めを尋ねる

例えば

正客:「お茶名(おちゃめい)は?」

亭主:「慶知の昔でございます」

正客:「お詰め(お茶のメーカーのこと)は?」

亭主:「小山園でございます」

ここで、先にいただいたお菓子についてもお尋ねする

以上となります。